研究紹介Our Researches Introduction

実施中の研究

北海道における持続可能な地域社会の形成方策に関する総合的研究~地方創生とSDGsからのアプローチ~

日本が人口減少社会に突入して10余年が経過し、特に地方圏では「地方消滅」の危機が煽られる中で、2015年度から「地方創生」政策が本格的に始まった。各自治体が人口減少対策などを取りまとめた「総合戦略」は、当初期間の5年が経過し、2020年度からは第2期に移行しつつあるが、5年間で目に見える成果を上げた自治体は少なく、東京一極集中の流れに歯止めはかかっていない。

2020年に発生した新型コロナウイルスのパンデミックは、「ウィズ・コロナ」時代に適応した社会経済システムへの移行を要請しており、それを地域の人口減少・流出の流れの転換に生かせるかが問われている。道内でもこの間、少ないながらも人口の社会増を実現してきた地域・自治体が、札幌圏以外にも存在する。そうした地域・自治体がなぜ人を呼び込むことができたのか、それ以外の地域を含めた定量的・定性的データの蓄積・分析を通じて、要因を解明することが求められる。そこで次期総合研究では、各地へのフィールド調査と並んで、北海道の地域情報データベースを、外部研究機関等との連携の下、GIS(地理情報システム)ソフトを活用して構築し、地域課題の解決への社会的要請に応える体制の整備を進める。

一方、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを後押しする政策手段として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs、エスディージーズ)」を活用する動きが、日本でも官民を問わず広がっている。地域や自治体、企業や教育機関等においても、2030年までの達成目標を定めたSDGsを検討・策定する過程を通じて、地域や組織の現状と課題を把握・抽出しながら、SDGsの改善を目指す事業が実施されている。

道内自治体ではニセコ町と下川町が2018年度の「SDGs未来都市」の「自治体モデル事業」に選定されるなど、積極的な取り組みが高い評価を受けている。両自治体はまた近年、人口の社会増を実現した点でも注目され、持続可能な地域社会の構築と地域の人口動態の関係を解明する必要がある。国内外のSDGsの取り組みの現状と課題を明らかにするとともに、本学も1つの事例と見立てて、「北海学園大学のSDGs」をテーマとした研究も行うこととする。

以上を踏まえて次期総合研究では、①地方創生と②SDGsという2つのアプローチから、北海道における持続可能な地域社会の形成方策について総合的に研究を行う。その際、本学が包括連携協定を締結する北海道、沼田町、釧路町などの自治体、HBC、コープさっぽろなどの企業・団体等と連携して進めることも視野に入れ、その成果を地域に還元するとともに、GISやSDGsに係わる研究やその成果を学生教育に採り入れ、北海道の未来を担う人材の輩出を目指す。

北海学園学術研究助成費(総合研究)2021~2023年度

これまでの研究の成果

地域資源開発の総合的研究-北海道の産業遺産、北海道の歴史遺産、北海道の文化遺産、北海道の自然遺産からの接近と再構築-

東京一極集中が留まるどころか加速的に進んで行く一方、JR北海道の「単独で維持困難な路線」の廃止へ向けた流れ等に象徴される北海道では、「消滅自治体」が現実のものとなる気配が強まっている。しかし、「開拓者精神」を建学の精神とし北海道の発展に寄与することを目的とする本研究所にとって、この流れを避けられないものと捉えるのではなく、今だからこそ先人が残した北海道の地域資源を未来へ発展的に引き継いでいかなければならない。本研究では、北海道の産業・歴史・文化・自然の各分野における先人たちの遺産を再発見・再評価するとともに、北海道の新たな「内発的発展」へ向けて再構築していく道筋を模索していきたい。

研究成果は「開発論集」第102号、104号、105号及び106号に掲載するとともに、「成果報告書」として刊行している。

北海学園学術研究助成費(総合研究)2018~2020年度

地開発研究所総合研究2018‐2020年度成果報告書
  • 2018〜2020 年度 総合研究成果報告書の刊行に寄せて

報告

北海道の産業・歴史遺産

  • 地域資源の保全と活用の行財政システム─炭鉱遺産を中心としたノート─
  • 「炭都のまち」をどうみるか
  • 産業遺産とむすびついた自治体観光政策の現状と課題─宮城県栗原市の細倉鉱山について
  • 本州型明治日本の産業革命遺産に対する北海道型産業革命遺産の歴史的意義
  • 炭鉱の社会史─三笠市幌内地区を中心にして
  • 北海道開拓時における鉄道の建設に関する考察
  • 北海道の発展と鉄道の役割
  • 旭川における公共交通機関の変遷
  • 足寄町における戦後開拓と開拓農協の遺産
  • 新ひだか町における産業遺産の観光資源化に関する研究
  • コロナショックのインバウンド観光への影響
  • かつての流通産業の活発化を見直す
  • 北海道の産業発展と人材育成─戦前の養成工制度を中心に─

北海道の文化・自然遺産

  • 奥尻島奥尻地区における「澳津神社例祭」の可視化と記憶地図
  • 北海道「開拓」と地域社会の形成過程─越中獅子舞の伝承をもとに─
  • 北海道における外国人開拓者の貢献─ J. バチェラーのアイヌ伝道の軌跡とアイヌ語研究、アイヌ民族との受容と葛藤─
  • 『北海道道南地方方言談話集』について
  • ニシン漁にかかる文化遺産の現状と課題
  • 教育を通じた町づくりと地域資源の再構築─奧尻町による高校設置とその可能性─
  • 文化資源としての「霧多布湿原」─地域文化の保存方策─
  • 政治的遺産は残せるか
  • 現代の起業家精神教育の主柱はコーチング
  • 建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズと北海道

資料編 アーカイブ化事業

分類:北海道の文化遺産(芸能)

  • 東士狩獅子舞 音更町

分類:北海道の産業遺産(炭鉱)

  • 茅沼炭鉱 泊村・岩内町
  • 炭鉱都市のくらし 歌志内市、沼田町
  • 釧路地方の炭鉱 浦幌町、音別町、白糠町、釧路市、釧路町、厚岸町

開発研究所 総合研究 3ヵ年計画(北海学園学術研究助成費)

北海道における発展方向の創出に関する基礎的研究

わが国における「人口減少・高齢社会」の進行が本格化する中で、最近では、「限界集落」のみならず「消滅可能性都市」(日本創成会議)などのショッキングな言葉が使われるようになってきている。1990年代後半以後の北海道にあっても、「人口減少・流出」「少子・高齢化」などの状況がすすみ、農林漁業における担い手対策や地域住民の生活支援策が重要な課題となっている。

ただし、北海道の「人口減少・高齢社会」化は、府県と比べて異なった特徴がみられる。第一に、札幌圏への人口一極集中が進行する反面、農山漁村地帯や旧産炭地において激しく人口が減少し、地域間格差が拡大している点である。教育、医療、文化など住民生活の基本に関わる事柄の格差拡大が深刻となっているのである。

第二に、最近では、JR北海道の経営問題、北海道電力の経営難・原発再稼働問題など、これまで地域をけん引してきた公益性の高い企業において、「制度疲労」とも呼べる諸問題が発生している点である。北海道の住民生活における社会基盤(産業インフラと生活インフラの双方にわたる)がきわめて脆弱に陥っているのである。

こうした状況の下、北海道にあっては中央政府主導ではなく関係者が自らの力で将来の発展方向を展望する必要がある。そのためには、道内各地域における産業と生活の具体的状況を明らかにして、時代の変容に対応した経済政策や社会保障制度、地域政策を構築しなければならない。それには、人口増加や経済成長を前提とした従来型の発想とは異なる、新しい着想を創り出す必要がある。この創出に当たっては、研究者や地域関係者との協働作業が必要であるが、そのためにも、第一に自治体や集落を単位とした基礎データを蓄積し分析をすすめること、第二に地域住民の置かれている実態を分析することも不可欠であると考える。さらに、北海道を発展させるための人材育成や、教育機関や官公庁などでいま活躍している人たちの学習環境の整備も重要な課題であろう。

以上を踏まえ、本研究所の設立趣旨に則り、共通テーマ「北海道における発展方向の創出に関する基礎研究」を軸として、個別テーマを設定し、3年間にわたる研究を深めるものとしたい。

研究成果は「開発論集」第97号、98号、99号、100号、101号、102号、103号、104号、105号、106号及び107号に掲載するとともに、『北海道市町村データベース(総合研究報告) 平成30年3月』として刊行している。

北海学園学術研究助成費(総合研究)平成27~29年度

社会的排除地域の自律的・自治的再生に関する日韓共同研究~札幌圏と大田広域市との比較を中心に

「社会的排除」は、貧困問題のみならず、地域社会の中で様々な「参加の欠如」や「社会関係の欠如」の問題として存在している。すなわち、「限界集落」や「買い物難民」等の高齢者世帯を巡る問題、若年層の未就労問題や「ひきこもり」、子育て世帯における子どもへの虐待などのほか、自治体における政策過程や市民自治、「協働のまちづくり」へのアクセスの困難さや、地域コミュニティの担い手が限定されていることなど様々な問題が包含される。

本研究は、このような諸問題について、韓国・大田大学校との連携によって、札幌圏と大田広域市の比較を中心にして研究を進めたものである。

その課題は、社会的排除としての現象とその原因、社会的排除問題に対する自治体の地域政策やコミュニティ政策の違いを明らかにした上で、社会的排除地域の自律的・自治的な再生のための方策を探ることである。

平成23年度は、日本側研究者が訪韓し、大田広域市が展開している「虹プロジェクト」等のコミュニティ政策に関する情報収集、その実施地区である東区板岩洞、大洞の見学を行うとともに、大田大学校で「地域コミュニティの活性化」をテーマに国際シンポジュウムを開催した。また、本学で札幌市職員も交えた合同研究会を開催した。

平成24年度は、韓国側研究者を招聘し、札幌市厚別区のもみじ台団地などで合同調査を行うとともに、本学において国際シンポジウムを開催した。

研究成果は、平成24年6月および、平成26年1月に「研究成果報告書」として刊行している。

日本私立学校振興・共済事業団学術研究振興資金 平成23年度
平成23~25年度

北海道の社会経済を支える高等教育に関する学際的研究―北海学園大学が果たすべき役割

北海道経済は、他地域に比べて低迷は長くかつ深刻であるが、この現状を打開する上で、教育の果たす役割は大きい。特に、社会を牽引する人材を育成する大学をはじめとする高等教育機関の役割は極めて大きい。

本研究は、北海道がもつ特性を活かした発展可能性を実現していくために、高等教育はどうあるべきなのか、その中で北海学園大学はどのような役割を果たすべきなのかを明らかにし、具体的な提言をしたものである。

研究は、23名の本学教員が教育理論、教育実践方法、教育政策・施策、産業・企業内 教育、北海道における教育的課題、北海学園大学における教育の6グループに分かれ、それぞれの分野について分担して進めた。

平成24年度は、研究参加者の問題意識の共有をはかるため、研究会を継続的に実施す るとともに、高等教育に関する現状や課題に関わる資料等の収集・分析を行った。
平成25年度は、研究会を引き続き実施するとともに、それぞれの担当分野に関するフィールドワークを進める。
平成26年度は、これまでの研究成果をとりまとめるとともに、具体的な提言を行った。

本研究はこれまでの研究の成果を生かしながら、北海道地域の教育について重要な役割を演じていくべきである本学の教育的取り組みについて重要な示唆をもたらした。

研究成果は「開発論集」第91号、92号、93号、94号、95号及び96号に掲載している。

北海学園学術研究助成費(総合研究) 平成24~26年度

分権型社会における地域自立のための政策に関する総合研究

北海道経済は、上昇局面に入るのが遅く、逆に下降局面に入る時期は早いという特徴があるが、現下の状況は道外他地域よりも深刻である。こうした現状において、どのようにして地域の発展方向を見いだすかが問題であるが、その一つが地域発展のための政策提示とその実行である。 北海道の場合、地域発展の政策は基本的に中央政府主導で進められてきたが、政策の中心的役割を担ってきた北海道開発庁がその役割を終え、地域発展をこれまでのハードインフラ中心の諸事業に期待をかけることは難しくなってきている。したがって、北海道及び市町村は自立した地域政策を構想し、実施することが求められている。

しかし、これまでの研究では、それぞれの地域の発展のために政策として展開されるべき方向を示してきてはいるものの、それぞれの専門分野からの接近にとどまっていた。

本研究は、それぞれの分野から提起された政策課題を総合化して提示することを目的としたものである。
研究成果は、『開発論集』第84号、第85号、第86号、第87号、第88号及び第89号に掲載している。

北海学園学術研究助成費(総合研究) 平成21~23年度

北海道開発政策の転換と自治制度に関する総合的研究-道州制と分権をめぐる諸論点

戦後に限っても60年にわたる中央政府主体の北海道開発体制は転換点にあり、北海道においても様々な観点から道州制論議がなされている。そのような中で、平成18年6月に「道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律」が制定され、北海道がその先行的検討地域に指定された。

北海道において道州制を論じるためには、北海道の社会経済構造全般にわたる学際的かつ総合的な県杞憂が必要である。

本研究は、地域政策論、地域制度論に関する国際的な理論・実証研究の動向を踏まえつつ、北海道開発論と接合し、現在の日本における道州制論議、地域制度改革と関連させ、政策課題を解明しようとしたものである。

研究成果は、平成22年3月に日本私立学校振興・共済事業団学術研究振興資金助成研究『研究成果報告書(平成22年3月)』として刊行している。

日本私立学校振興・共済事業団学術研究振興資金 平成19~21年度

人口減少下における地域の発展可能性に関する実証的総合研究

北海道の人口は、全国より早くに減少をはじめ、そのスピードも速いと予測されている。こうした人口減少は、首都圏や近畿圏の大都市と並んで低い合計特殊出生率と、他府県への人口移動によるものである。

その中で、札幌に道内各地から人口流入が続く一方で、それ以外の地方では全国の他地域よりも激しい人口減少が続くと考えられる。 しかし、現在の動きが必ずしも不可逆的なものであるとは言えない。すなわち、出生率の変化や人口移動も、地域の産業経済活動や文化、環境、インフラ整備状況その他の社会構造に大きく影響されるため、これらの社会構造の変革によって変えることもできるからである。

本研究は、このような観点から、北海道における少子高齢化への対応と、人口減少の趨勢の転換条件について学際的・総合的に検討したものである。

研究成果は、『開発論集』第80号、第81号、第82号、第83号及び第84号に掲載している。

北海学園学術研究助成費(総合研究) 平成18~20年度

北海道における発展条件の創出に関する研究-開発庁統廃合後における地域再生政策の検討

これまで北海道経済の牽引者的な役割を果たしてきた公共事業は、北海道開発庁の統廃合や開発予算の特例措置廃止等により、その役割を大きく後退させた。また、観光産業は平成12年3月の有珠山噴火の影響が全道に広がっており、また、I T・ソフト産業も日本経済の長期的な景気後退の影響を受けて拡大していない。

このような経済的な困難を克服するいとまもなく、苫東開発の破綻、雪印乳業の不祥事、BSEの発生、エア・ドゥの破綻、北方4島をめぐる政治スキャンダルなどが景気後退に追い打ちをかけ、総務省が平成14年4月に発表した1~3月期の完全失業率は、全国平均の5.4%に対し、北海道は7.2%で過去最悪となった。

本研究は、このような北海道地域の実情を踏まえ、公共依存体質からの脱却と新しい発展可能性の条件を求め、北海道地域再生へのシナリオ構築のための素材を提供しようとしたものである。

研究成果は、『開発論集』第77号、第78号及び第79号に掲載している。

北海学園学術研究助成費(総合研究) 平成15~17年度

自然災害に伴う地域変化と復興に関する研究-北海道・有珠山噴火災害地域を対象にして *1
北海道・有珠山噴火に伴う被災地の災害実態とその復興計画に関する総合研究 *2

有珠山が平成12年3月31日に23年ぶりに噴火してから1年以上が過ぎ、大部分の地域では避難解除がなされ、住民生活は落ち着きを取り戻してきているかにみえる。

しかし、噴火口近くの住宅地は依然として住むことができず、未だに仮設住宅で暮らしている住民がいる。また、高速道路と一部の主要道路では引き続き通行止めとなり、洞爺湖畔の観光関連産業では休業のホテルや店舗なども多く、一部の病院や学校などは仮設や全面移転を余儀なくされている。

本研究は、このような被災地の現状を総合的に把握し、それを踏まえて、いま被災地域に求められている地域経済や産業、住民生活や教育・福祉などの諸問題、各種インフラ整備などに対する解決策を探り、地域復興策の全体像をまとめ、それらについて政策提言を行ったものである。

研究成果は、『開発論集』第71号及び第72号に掲載するとともに、科学研究費補助金助成研究『研究成果報告書(平成15年6月)』として刊行している。

*1 北海学園学術研究助成費(総合研究) 平成13~14年度
日本私立学校振興・共済事業団学術研究振興資金 平成13~14年度
*2 科学研究費補助金(基盤研究B)  平成13~14年度

21世紀北海道の将来像-グローバル化の中での地域振興と自立への戦略

北海道は、日本経済の景気低迷が長期化する中で、基幹産業である農業・漁業の不振、鉄鋼・造船業の縮小、石炭産業の崩壊等によって、地域社会の活力を失ってきた。また、国の財政悪化に伴い、国や道による公共事業の抑制も加わり、地場産業の衰退や雇用情勢の悪化、道央一極集中など、道民生活を取り巻く厳しい状況が存在する。

今や政治・経済・技術のグローバル化に伴って、従来のシステムに替わる新たな方向が模索される時代を迎え、官依存体質を改め、道民の主体的なエネルギーに立脚した経済・社会・文化全般にわたる「内発的発展」を目指さなければならない。

本研究は、このような状況を踏まえて、新たなパラダイムの中で、北海道における21世紀の将来像を描くため、①人的資源の育成・活用の問題、②ハード、ソフト両面にわたる新技術の開発問題、③地方分権を含めた自治体の再編成問題、④地域経済社会を変える具体的な施策、⑤海外交流の現状と将来等、現段階の北海道を総合的に分析することとしたものである。

研究成果は、『開発論集』第67号、第68号及び第69号に掲載している。

北海学園学術研究助成費(総合研究) 平成10~12年度