文学研究科Top page of Graduate School of Letters

研究科長からのご挨拶

「新人文主義」の下での人文学の再生


文学研究科長
郡司 淳

文学研究科は、ルネサンス期を起源とする人文主義が列強の植民地支配や地球的規模の環境破壊を後押ししたことを反省し、自然・他者との共生の下で人間のあるべき姿を問い質そうとする「新人文主義」をその基本理念としています。今日、人文学の再生は、このような新人文主義の下、井上ひさしが東京裁判三部作の最後の作品である『夢の痂』(2007年)のエピローグにおいて、戦後日本の未来を託した、「主語を探して隠れるか 自分が主語か それ次第/自分が主語か 主語が自分か それがすべて」の一節にかかっています。

研究者である以上、新規性は生命ですから、「研究史上の課題」から自由になることはできません。しかし、かつて人文学は、西洋史家・故上原専禄が「それをやらねば生きてゆけないというテーマ」を探すべきと教え子に説いたように、個々人の生き方と分かちがたく結びついていました。だからこそ、上原にあっては、「解るとはそれによって自分が変わること」、すなわち生き方が変わることを意味していました(阿部謹也『自分のなかに歴史をよむ』1988年)。そのようにして、研究を自らのうちに取り戻すことが、現在、人文学に問われています。

文学研究科が、「新人文主義」を掲げるとともに、文学・言語学・思想史を中心とする「言語・思想文化」と、歴史学・人類学を中心とする「歴史・環境文化」の2領域を軸とした、学際的な教育研究を特色とするのも、ともすれば知的探究ゲームに陥りがちな研究の現状を克服し、人文学の再生を願っているからにほかなりません。「研究史上の課題」を探して隠れ、それはそれとして生きるのか。それとも、自分を主語として立てたテーマをとおして人間の営みに学ぶのか。近い将来、文学研究科で学ぶ意思のある方には、未来が予測不能ないまこそ、人文学をとおして「明日をいかに生きるか」を模索してほしいと念じています。

大学院進学を希望される皆様へ

文学研究科では、メールもしくは電話でのご相談を受けつけています。また、ご希望の方には、オンライン・ビデオ会議システムを使用した相談も可能です。担当教員が対応しますので、以下の手順に沿ってメールでお申し込みください。

1. 相談窓口 (jinbun〇hgu.jp※〇を@に変換) に相談方法の希望を連絡する。
①氏名、②連絡先メールアドレス、③日本文化・英米文化専攻の別、④おおよその研究分野やテーマ、⑤メール・電話・オンライン・ビデオ会議システムのいずれを希望するかについてお知らせください(オンライン・ビデオ会議システムの場合はZoom等の使用ツールも記入)。

2. その後、担当者よりご連絡いただいたメールアドレスに返信して相談日時・方法の調整をさせていただきます。

日本文化専攻 修士課程・博士(後期)課程
英米文化専攻 修士課程・博士(後期)課程

北の大地を豊かな教育の場とし、社会に根ざした活動を行う文学研究科では、両専攻とも「言語文化(文学と言語学)」、「思想」、「歴史」、「環境と文化」の四分野を視野に入れながら新人文学の可能性を探ります。そのうえで、日本文化専攻はこれらが提起してきた課題を歴史的背景を踏まえて理解し、豊かな文化創造を主体的に担いうる人材の養成を目指しています。英米文化専攻は、日本にとって欧米世界とは何かを問いかけ、国際社会の中で自立しうる人材を養成します。

教育研究上の目的

日本文化専攻は、暮らしのかたちである文化を己の目でみつめ、己の心に根ざした思いを問い質す営みをとおし、日本文化の創造的発展を担いうる人物の養成を目的とする。英米文化専攻は、ヨーロッパ社会が生み育てた近代文明を根底から問う営みをとおし、日本文化を創造的に覚醒しうる人物の養成を目的とする。
(研究科規則第2条第3項)

開設年 1999(平成11)年  日本文化専攻修士課程 開設
2001(平成13)年  日本文化専攻博士(後期)課程 開設
2003(平成15)年  英米文化専攻修士課程 開設
2005(平成17)年  英米文化専攻博士(後期)課程 開設
入学定員 日本文化専攻 修士課程      5人
日本文化専攻 博士(後期)課程  2人
英米文化専攻 修士課程      5人
英米文化専攻 博士(後期)課程  2人

双方向型リアルタイム遠隔授業

国内の遠隔地に在住しているなどの事由により通学が困難であると本研究科が認めた場合には、修士課程に限り、修了要件のすべての科目をオンライン・ビデオ会議システムを使った双方向型リアルタイム遠隔授業によって例外的に履修することができる。ただし、全体ゼミ(中間発表会)および口述修了試験は、対面を原則とする。

※『大学院要覧』は2023年6月作成の内容です