vol.001 連携協定による取組みの現状と展望についてArticle-001

2016 WINTER / vol.001

連携協定 -はじめの一歩-

文責:工学部建築学科 岡本浩一

少子高齢・人口減少社会を迎え、多くの人々が集まって暮らす団地には、新たな可能性が秘められていると考えられ、昨今、注目を集めています。UR都市機構(UR)と学校法人北海学園は、道内初となる連携協定を締結しました。両者の密な協力体制のもと、開発研究所を窓口に、地域に貢献する様々な研究・実践活動が行われます。

その端緒として、UR澄川団地を対象とする取組みを始めています。団地にお住まいの方々から、居住実感や生活実態を伺う様々な調査を通じ、現状を正確に把握しつつ望ましい団地の在り方を検討・提案することが目標です。URの全面的バックアップのもと、学生は卒業研究のフィールドとして団地に訪れ、お住まいの方々と顔を合わせながら、若い力や発想を活かして研究に取組みます。机上ではなく現実に直接向き合う機会は、大変に貴重なものです。教員は知識と経験を活かし、学生とともに調査研究を進めて目標の達成を目指します。進捗や社会情勢の変化などに応じ、数年毎にテーマを見直し取組んでいきます。研究成果の如何によって、URの今後の取組みに反映され実現する可能性もあります。始まったばかりではありますが、既に学生のやる気や取組み姿勢には目をみはる様子が窺えます。

現在は3つの調査研究に取り組んでいます。
ひとつは、ミクストコミュニティの形成による共助の仕組みが生みだす安心・安全な居住環境の実現についてです。これは、同じ世代が同じように年老いていく場所では難しいことです。団地のなかに多世代が混ざり合って住むことで、互いの得意を活かしたり、時間や労力を融通しあったりできます。高齢者は子育ての応援、若者は模様替えの手伝い、学生は子どもたちの宿題や遊びの見守りなど、日々に豊かさや安心を得られます。現在お住まいの方々が、そのよ うな暮らしに馴染むための要点を明らかにする研究に取組んでいます。

もうひとつは、団地のイメージと住棟の色彩との関係についてです。「団地」と聞くと少し暗いイメージを抱かれる方がいらっしゃると思います。それには、住棟の色彩が関係しているのかも知れません。通常は、経年変化による劣化やすすけが目立ちにくい色彩が用いられます。しかし、塗料や建材も日々進化しており、これまでのイメージを払拭する住棟の色彩を考えることもできそうです。住棟の色彩を変化させると団地の印象がどのように変化するのか、澄川団地を事例として、写真を下敷きにコンピューターで合成した色彩シミュレーションをおこない、団地にお住まいの方々に評価いただく研究に取組んでいます。

さらにひとつは、団地敷地内の仕立てがお住まいの方々の偶発的な交流や経路選択に及ぼす影響についてです。URの団地は、敷地面積に余裕があり比較的ゆったりと建てられています。ベンチや東屋あるいは豊かな木陰もあります。居住環境は、住宅内だけでなく、敷地やその周辺との関係からも形づくられます。団地にお住まいの方々が、敷地内をどの道筋で歩かれているのか、交流の場はどの辺りなのか、などを明らかにする研究に取組んでいます。実状を捉えることで今後の計画に欠かせない視点を整理しようとしています。

この3つの取組みは、はじめの一歩です。今後は開発研究所を通じ、多様な研究分野で活躍の教員と学生の取組みも見込まれます。学生が、実態の正確な把握を前提に新しい提案を検討する取組みは、これからの少子高齢・人口減少社会を支え、豊かな社会の実現に活躍するために大変貴重な経験となるでしょう。

連携協定による取組みの現状と展望について

岡本浩一先生・石橋達勇先生インタビュー

録音状況により一部音声が聞き取りづらい箇所があります。あらかじめご了承ください。