卒業生・修了生の皆さんへのはなむけの言葉News & Information

お知らせ最終更新日:2020.03.23
卒業生・修了生の皆さんへのはなむけの言葉

皆さま、このたびはご卒業ならびに大学院修了おめでとうございます。
例年であれば、「北海きたえーる」で盛大な「卒業証書・学位記授与式」を執り行うところですが、今年度は新型コロナウィルス感染が拡大している現状に鑑み、3月20日に予定していた式典を中止することとなりました。本学の学位記授与式には、例年、卒業生、修了生、ご家族の方々など、3000名以上の方がご出席になりますが、万が一式典参加者のなかから感染者が出た場合には、4月からの新生活にもゆゆしき影響が出かねません。それゆえ、感染防止の観点から苦渋の決定をさせていただきました。これに伴い卒業祝賀会も取り止めとなり、痛恨の極みでございます。しかし何卒、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

本年令和2(2020)年は、本学にとって創基70年という記念すべき年にあたります。70年に及ぶ本学の基礎を築かれたのは、上原轍三郎初代学長です。学長室の正面の壁には上原先生の肖像画が掛けられています。わたしは毎日それと向き合い、心の中で対話しながら執務しています。先生は1954年3月7日、第1期卒業生たちに向けてこう語られました。

そこで私の諸君に望む第一のことは、諸君は大学卒業生であると云う襟度を堅持し誠心誠意を以て其の職につとめ、本学に於て修得した知識と教養とを基礎として、より高き見識と、より高き人格とを、各自の職場に顕現し、新しき建設をして行くと云うことである。蓋し大学は最高の学府であって、其の卒業生は、一般の水準以上の学識と教養とを有するものである。之れあって始めて大学卒業生たるの誇りを持ち得るのである。

「襟度(きんど)」という言葉は、「人を容れる度量。心の広さ」を意味しますが、これはわたしの世代にとってすら死語になっています。大学卒業生が「一般の水準以上の学識と教養を有するもの」であるとの認識も、ユニバーサル化の時代のわれわれには、アナクロニズム(時代錯誤)でしかないかもしれません。しかしわたしも上原先生に倣って、本学を巣立つ皆さんに次のような「はなむけの言葉」をお贈りしたいと思います。

皆さん、北海学園大学の卒業生であるという矜持(きょうじ)をもって、広く社会のなかでご活躍下さい。「矜持」とは自分の能力を信じていだく誇り・自負・プライドのことですが、それは鼻持ちならぬエリート意識とは別物です。欧米社会には「ノーブレス・オブリージュ」(noblesse oblige)という観念があります。身分の高い者つまりエリートは、それに応じた社会的責任と義務を果たさなければならないという道徳観です。高い地位には道徳的・精神的義務が伴うのです。ところが、いまの日本人はおしなべて矜持を失ってしまいました。皆さんには、本学の卒業生として、是非とも矜持をもった人間であって欲しいと願っています。

学長 安酸 敏眞

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